袴田事件と聞くと、日本の刑事裁判史に残る冤罪事件として真っ先に思い浮かびますよね。
しかし、この事件の中で唯一の生存者である長女の証言が、なぜか「不気味」として話題になることがあります。
なぜ彼女の発言や態度に対して、そんな印象が生まれるのでしょうか？
背景にはどんな事情があるのか、一緒に考えてみましょう。
袴田事件の長女の証言が不気味なのは取材にありか？
事件当時、長女は19歳という年齢でした。
親戚の家に避難していたことで命を取り留めたものの、家族を一度に失うという過酷な運命を背負うことに。
それでも彼女は取材や証言に応じ、事件の真相解明に協力してきました。
しかし、その発言が一部で「不気味」とされるのには、当時の取材陣にいくつかの理由がありそうです。
考察を含め当時の取材でのコメントを見ていきましょう。
朝日新聞の取材
朝日新聞の取材で彼女が語った言葉に、「もし袴田さんが無罪なら、一日も早く真犯人が見つからないと仏様は浮かばれない」というものがあります。
この発言、冷静に聞こえる反面、感情が伝わりにくいですよね。
『朝日新聞』の取材に対し「もし袴田さんが無罪なら、一日も早く真犯人が見つからないと仏様は浮かばれない」と話していた
家族を失った被害者としての悲しみが滲み出ているものの、冤罪の可能性が取り沙汰される中で、何とも言えない複雑な感情が垣間見えます。
この時点で長女自身も混乱していたのかもしれません。長年信じてきた「袴田巌＝犯人」という前提が崩れる恐れに直面していたのでしょう。
こうした発言が「不気味」と感じられるのは、被害者らしい感情の爆発が見られないことが一因かもしれません。
家族を失った苦しみの中での冷静な発言に、普通では考えられない何かを感じた人も多いのではないでしょうか。
トラウマを抱えた人が感情を抑え込むのはよくあることです。
心理学的にも、自分を守るために意図せず「平静を装う」ことがあるとされています。そう考えると、彼女の言葉にも背景があると分かりますね。
読売新聞の取材
次に、読売新聞の取材で彼女が語った「もう昔のことです。もう何も知らない。私には関係ないわよ」という発言。
この冷たい印象を与える言葉が、一部で違和感を呼びました。
『読売新聞』の取材に対しては「もう昔のことです。もう何も知らない。私には関係ないわよ」と語っている
家族を奪われた事件について「関係ない」と言い切る姿勢は、多くの人に驚きを与えたようです。
ただ、この発言の裏側には、取材や世間の目にうんざりしていた可能性も考えられますよね。
取材が続く中で疲弊し、過去のことを思い出したくなかったのではないでしょうか。
長期間注目を浴び続ける事件では、被害者やその関係者が心身ともに追い詰められることが少なくありません。
実際、彼女は事件後に重度のうつ病を患い、精神科に入院していたことも報じられています。
これだけでも、彼女の発言にどれだけの背景があるかがうかがえます。
事件の当事者であっても、心の整理をするために「距離を置く」態度を取ることは珍しくないそうです。
感情的に疲弊した彼女が、あえて突き放すような態度を選んだのかもしれませんね。
毎日新聞の取材
毎日新聞では、「裁判はもう終わった。話すことはありません」と語ったことが記録されています。
この発言は、再審請求の過程で彼女が事件に興味を失っているかのように映りましたが、背景にはやはり精神的な負担があったと考えられます。
同月20日に『毎日新聞』の取材を受けた際には「裁判はもう終わった。話すことはありません」と話していた
実は、彼女はテレビを見ず、携帯電話も持たない生活をしていたため、裁判の進展を詳しく知らなかったそうです。
この生活環境が、彼女を事件から遠ざけていた可能性もありますね。
また、インターネットでは彼女に対する無根拠な中傷が絶えなかったため、彼女自身が事件について語ることを避けるようになったのかもしれません。
被害者としての人生を歩む中で、余計なストレスを受け続けたとしたら、どれだけ心がすり減ったことでしょうか。
袴田事件の長女の証言が不気味とされる理由
彼女の言動が「不気味」とされるのは、一般的な被害者像からかけ離れているからでしょう。
家族を失った人が事件について語る際には、強い感情が表に出ることが多いとされています。
ところが、長女の場合は感情を押し殺したような発言が多かったため、違和感を覚える人がいたのでしょう。
しかし、そうした態度は「彼女の冷たさ」ではなく、精神的な疲弊やトラウマが影響している可能性が高いと考えられます。
事件後、彼女は自分の生活を守るために感情を隠し、取材や噂話から距離を取らざるを得なかったのかもしれません。
事件関係者として何十年も注目を浴び続ける生活は、想像を超える苦しみがあるはずです。
まとめ
袴田事件の長女の証言が「不気味」とされる背景には、彼女が抱える複雑な感情や、精神的な負担が大きく関係していると考えられます。
一見冷たい印象を受ける発言も、実は長年の疲労や取材への抵抗の表れであったのでしょう。
事件の当事者に対して、私たちは時に過剰な期待を持ってしまいがちです。
しかし、その背景にある事情や心情を深く理解しようとすることが重要ではないでしょうか。
また次回、事件の真相や背景を掘り下げていきましょう！最後までお読みいただきありがとうございました。
